最高裁判所第三小法廷 昭和25年(オ)440号 判決
論旨第一点は、原判決には相続税法五一条の解釈を誤つた違法があるというのである。なるほど明治三八年法律一〇号相続税法に於ては、贈与に対する税は相続税として年賦延納を許されており、そのことは現行の昭和二五年法律七三号相続税法についても同様であるが、本件に適用される昭和二二年法律八七号相続税法においては相続税と贈与税とを厳格に区別している。例えば贈与税の納税義務者にしても前記二つの法律においては受贈者であるのに対して、本件に適用される法律においては贈与者である。かように本件当時の法律においては相続税と贈与税とは性質を異にするものとして別箇に規定されているのであるから、相続税についての延納の規定が贈与税についても適用あるものとは解し難い。従つて被告税務署長が本件延納の許可を取消したのは当然であり、これを認容した原判決は結局において正当である。論旨は理由がない。
その余の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 井上登 島保 河村又介 本村善太郎)
上告代理人大家国夫の上告理由
第一点
原判決は相続税法第五十一条の解釈を誤つた違法がある。
即ち原判決の引用する第一審判決は「租税の年賦延納等納税義務者の負担軽減は特に法律の規定の存する場合に限り例外として認めらるるもので法律に特に規定のない限りは租税の年賦延納は認められない」と論断し同法条を以て「相続税のみに定められた規定で贈与税に付ては結局之を認むる規定を欠くから年賦延納は法律上許されない」と断定している。
併しこれは何等根拠のない独断である。贈与税の場合にも納付困難の事情は相続税と同様であり国家の側からも差押競売による手数費用の浪費並資本の屑化の損失を考うれば寧ろ確実な担保による延納の方が有利でありこれを禁止すべき理由はない。又納付困難でなければ許可しなければよいのである。
第二点
原判決は贈与税年賦延納許可処分の解釈を誤つた違法がある。原判決の引用する第一審判決は「税務署長が仮令このような年賦延納許可処分を為したとしても何等法律上の効果を生ずるに由なきものというべきである」としかかる行為は当然無効であつて本件取消処分は無効宣言に過ぎないと論断した。
併し相続税の賦課並徴収が税務署長の権限に属する以上其の徴収方法の範囲内に属する年賦延納許可処分が全く権限外で無効であると言うのは誤である。
租税の滞納処分に際し直に公売して資本の屑化をなすよりも或は執行を延期し或は公売を延期していることは今日通常行はれている実際である。年賦延納許可処分もこれと全く同じく徴税の一方法であり決して税務署長の権限外の行為ではないのである。
原審判決は徴税の実状を知らず従つて之を規律する法律を誤解せるものであつて破毀を免れない。
以上